・英語論文の書き方が知りたい
・英語論文を書く際の注意点を教えてほしい
上記のご要望にお応えするために、この記事では、英語論文の書き方についてご紹介します。
Contents
英語論文が重要な理由
多くの理系大学生は、研究を始める前に先行研究を調べます。
その際に、いくつかの論文を読むことになります。
ここで重要なのが、「多くの論文が英語で執筆されている」ことです。
と言われても、ピンとこないはず・・・。そこで、論文使用言語の動向についてみてみましょう。
アメリカのChemical Abstracts Service(CAS)が作成している化学分野のデータベースを対象に、科学技術分野で最大規模を誇るデータベースひとつであるCAファイル(Chemical Abstracts)を調査。
表1は世界の主要言語に対し、40年間の使用割合の推移を示したものである(単位%)。出典:データベースからみた論文使用言語の動向、第39回情報科学技術研究集会予稿集
表をみると、40年間で英語だけが増加していることがわかります。
また、2020年においてはさらに英語論文の数が増えていることが予想されます。
そのため、理系学生にとって英語は必須かつ身近なものになりつつあるのです。
大学院に進学するならなおさら、英語論文を読んだり執筆する機会が必ずあります。
以上から、理系学生にとって英語論文は切っても切れない関係にあります。
論文の一般的な構成
論文を投稿するジャーナルによって多少は異なりますが、一般的な論文の構成は決まっています。
正式な論文の場合は、英語や日本語といった言語関係なく、下記の構成で書かれる場合が多いです。
・Title:タイトル
・Abstract:要約
・Keywords:キーワード
・Introduction:序文
・Methods:方法
・Results :結果
・Discussion:考察
・Conclusions:結論
・Acknowledgements:謝辞
・References:参考文献
・Appendices:付録
ただし、あくまで「一般的な論文構成」であるため、事前に投稿するジャーナルで過去の論文を調べて確認することをオススメします。
まずは、それぞれの大まかな役割についてみていきます。
・Title:タイトル
・Abstract:要約
・Keywords:キーワード
上記に関しては、検索のされやすさを意識して書くことが重要になります。
せっかく書いても読まれなければ意味がありません。
特に、「情報量」「魅力的な論文か」を意識して書くとOKです。
・Introduction:序文
・Methods:方法
・Results :結果
・Discussion:考察
・Conclusions:結論
上記の役割は、執筆した論文であなたの主張を伝えることです。
そのため、原稿はなるべく簡潔に書く必要があります。
・Acknowledgements:謝辞
・References:参考文献
・Appendices:付録
上記は補足説明になります。本文で伝えきれなかった部分を書きましょう。
以上が、大まかな役割になります。
つぎに、それぞれの構成部分の詳しい書き方について確認しましょう。
Title:タイトル
・論文の内容を適切に表現している
・重要なキーワードが書かれているか
・問題を特定しているか
・できるだけ短く
・似た意味の言葉や、同単語を繰り返し使用していないか
・特定の人しかわからない略語を使用しているか
タイトルは非常に重要です。このタイトルが悪いと読む気が失せるため、読者の注意を引く、魅力的かつ効果的なタイトルを付けることが重要です。
論文を検索する際に一番最初に目にするのがタイトルであるため、あなたが行った研究がタイトルに反映されるよう心がけましょう。
Abstract:要約
・論文で一番伝えたいことを書く
・単独の読み物として成立し、だれが読んでも理解できるように書く
・本文に書く問題・方法・結果・結論をまとめる
・本文で書かれていないことは記述しない
論文の検索の際にヒットするワード(宣伝・抄録・検索)に利用します。
目安ですが、短い文章(300字程度)で簡潔に書く必要があります。
年々論文の投稿数は増え続けているので、すべての論文を読んでいてはキリがありません。そのため、すぐにその論文で発見されたことを理解するために、要約を読んで内容を大まかに把握します。その内容が稚拙であれば、読む価値がないと判断され、読まれなくなります。
そのため要旨を書く際に重要にあるのが、「一番伝えたいことが盛り込まれているか」になります。
多くの人に読まれる論文を書きたいなら、しっかりと時間をかけて執筆しましょう!
Keywords:キーワード
・略語はできるだけ避ける(確立されたものは使用可能)
・一般的、または特殊な単語は避ける
・あなたの論文を1単語(2~4単語もOK)で示せるワードを選ぶ
論文を抄録・検索サービスを利用する時に利用します。
キーワードは、検索サービスを利用する際に特に用いられるため、論文の中身にあった適切なワードを選ぶことが重要となります。
Introduction:序文
・研究課題を簡潔に記述する
・背景:過去にどういったものが行われてきたか
・目的:この研究で何を解決したいのか
・方法:どのような手順で解決するのか
研究の重要性について読者を説得するために、一般的に述べられていることやあなたの考えを記述します。
序文は、本文の最初の部分であり、あなたが書いた論文全体の内容を理解するために必要な基礎知識を読者に提供する場になります。
基礎知識を示す流れはある程度決まっていて、研究背景→研究目的→方法の順で記述していきます。この流れを無視すると、何を伝えようと考えているのかわからなくなるため、一般的な序文の記述方法はしっかりと押さえましょう。
序文に書く文章内容は、簡単にいうと論文の「Why」についてを書きます。
Methods:方法
・誰でも再現できるように簡潔かつ詳細に書く
・使用した機材や材料、被験者情報を明確にする
・過去に発表された方法は省略して書く
Introduction(序文)で問題定義したことに対して、どのように解決したか「プロセス」を記述します。
記述する内容は、誰がやっても必ず再現できるように簡潔かつ詳細に書く必要があります。そのため、使用した機材や材料はもちろん、被験者情報も明確に記します。
Results :結果
・何を発見、解決したか具体的に示す(図や表を用いての解説)
・定性的・定量的に結果を示す
・既存の研究結果と何が違うのかを解説する(論文の新規性)
・結果で示されたこと以外は記述しない
・データの改ざんは絶対にダメ
その論文で、何が発見できたか、何が解決できたかを記述します。
ここで重要になるのが、定性的・定量的に結果を示すことです。特に理系は数値で結果を示すことが多いため、定量的に示す必要があります。
またその数値が「何を示しているのか」「どう解釈できるのか」をしっかりまとめましょう。
Discussion:考察
・結果の説明だけでなく、「考察」を書く
・各結果に対応した考察を記述する
・結果を繰り返さない
・公表済みの論文と比較する
・論文で言及していない用語は用いない
Results (結果)をもとに、何を見て正しい結果が得られたか、そこから新しい課題や他研究との相違性を考察します。
また至らなかった部分で、なぜ足りなかったのか、そこから何がわかるのかも考察対象になります。
Conclusions:結論
・研究の影響力・正当性を簡潔に書く
・今後どのような実験を行っていくのか述べる
・論文中に述べられていないことは記述しない
結果から得た情報が、その分野においてどのレベルまで進歩するのかを具体的に記述します。
また結果のみを示すのではなく、どのような実験を行うのかを示す場でもあります。
Acknowledgements:謝辞
・長々と述べる必要はなく、簡潔に書く
・基本は「指導教官」「助言をいただいた教授」「協力したいただいた人、企業等」を書く
単にお礼を述べる場ではなく、研究結果の出自を明確にする場であります。研究を円滑に進めるためにもきちんと謝辞を書く必要があります。
References:参考文献
・参考文献で引用する資料はよく理解しておく
・必要以上に参考文献を引用しない
・いくつかは影響力が大きい引用数が多い資料を参考文献とする
研究の基礎として用いた文献を明記する必要があります。
また影響力が大きい引用数が多い資料を参考文献で用いることで、説得力が増すことがあります。論文の質を上げるためにも、権威性のある論文を探す癖は付けておきましょう。
論文で引用した内容を参考文献で示さないと、盗作になるため気を付けましょう。
Appendices:付録
・被験者や材料の詳細な結果を書く
・基本はデータのみを記載する
本文に乗せられなかった結果を記載します。
論文を執筆する順番
論文を仕上げるには大変な時間と労力が必要になります。
手間をかけずに執筆するためにはいくつか手法がありますが、ここでは論文を執筆する順番について解説します。
多くの論執筆者は、以下の順番で論文を書く場合が多いです。
1.図、表(論文で記載するデータ)
2.Results :結果
3.Methods:方法
4.Discussion:考察
5.Introduction:序文
6.Conclusions:結論
7.Title:タイトル & Abstract:要約
8.Keywords:キーワード
9.Acknowledgements:謝辞 & References:参考文献 & Appendices:付録
上記の執筆順は、ジャーナルが推奨している書き方でもあります。今まで上(タイトル)から順に記述していた方は、一度上記の順に書いてみてはいかがでしょうか。
英語論文執筆の際の注意点
ここでは英語論文を書く時に気を付けたいことをまとめます。
質の高い論文は、良質な研究結果が必要ですが、それ以外にも「論文の基礎」や「書き方」を知る必要があります。
正しい英語を使用して書かなければ、読者に著者の意図が伝わりません。
ここで間違いやすい点を押さえましょう!
ここで書かれている内容がすべてではありません。
執筆が終わったらネイティブに間違いがないか確認をとりましょう。
文の構造
・簡潔かつ短い文章を心がける
・1文に複数の情報を述べない
・肯定文で書く(否定文はできるだけ用いない)
・文章の流れは、「既知の情報」→「未知の情報」
英語論文の平均的な長さは、12~17語程度です。30単語以上の文章があれば、長すぎるため文章を分けるなど、工夫をしましょう。
また、視聴したい部分を短い文章(4~6程度)で、表現するのもテクニックの一つになります。
日本語の論文でもよく見られますが、できるだけ肯定文で記述するように心がけましょう。否定文で記述する場合は、あなたが主張したい部分にとどめておくとgoodです。
文法
・能動態を意識して文章を短縮する
・省略形を使用しない(it's等)
・略語は文章内で定義されたものを用いる(一般的に確立されたものは使用可)
文章を書くときは、能動態を意識して短縮するよう心がけましょう。
受動態で記述すると、文章量が増えるほか、主語がどこにあるのかすぐに理解することができません。
また文章を書く際に気を付けたいこととして、略語は文章内で定義されたもの以外は使用してはいけません。
複数回登場するときは、最初に現れる単語の後に略語を定義しましょう。
ただし、ジャーナルによって略語を用いてはいけないこともあります。
投稿するジャーナルを確認してみましょう!
時制
・現在形:既知の事実、仮説を書くとき
・過去形:あなたが行った実験、その結果を書くとき
日本語で執筆する際にも適用されますが、既知の事実と仮説を書くときは現在形、あなたが実際に行った実験とその結果を記述するときは過去形を用いて表現します。
一般的な書き方なので必ず覚えておきましょう!
図や表の書き方
・表には縦線を入れない
・表の単位の位置と小数点に気を付ける
・図中の文字が読みやすいようフォントサイズに気を付ける
・図で示すとき、連続性がある場合は折れ線グラフ、ない場合は棒グラフを使用
・表や図だけ見て理解できるように、本文で言及した内容や、略語を用いない完全表記といった情報をすべて記述する
上記のように表を用いる時は、表の単位の位置や小数点に気を付けましょう。
また英語論文では縦の罫線は入れません。
図に関しては、図だけで何を伝えたいのかすべて理解できるよう、詳細な情報を記述します。
日本語論文で用いられる表は、縦の罫線を入れる方もいます。
しかし英語圏の方には、表の縦罫線は稚拙だと思われるため使用は控えましょう。
その他
・冗長な単語やフレーズは使用しない
例)and also → and、in the case of → in case 等
・副詞は最小限におさる(However、In addition 等)
・多くの前置詞句を続けて書かない
・主観的な形容詞を避ける
・あいまいな形容詞を避ける
・限定がないThisを使用しない
上記以外にも気を付けることはありますが、ここではよく避けたい表現のみをピックアップしました。ここで紹介するのは総じて、「読者が読みやすい文章」表現を心がけることです。
遠回しの表現や、あいまいな言葉は日本語論文でも嫌われるため、文章を書く際は誰が読んでも理解できるような文章を書きましょう!
まとめ
論文の書き方と構成の基本をご紹介しました。
ここでご紹介した内容はあくまで英語論文を書くための基本となっています。英語に自信がある方は良いのですが、執筆し終わったら1度はネイティブの方に確認をしてもらいましょう。
質のいい論文を仕上げたとしてもあなたの研究が他者に伝わらないと、書いた意味がありません。
しっかり基本を押さえて、あなたにしか書けない論文を執筆してみてはいかがでしょうか。